LOVE or DIE *恋愛短編集*
街灯の下で照らすと、ジャージはまだらにシミになっていた。
悠太はそれをバタバタと振って軽く乾かした。
しばらくそうしているうちに、内側には濡れたあとがはっきりと分かるが、表はそれほど気にならない程度になる。
ジャージを羽織り、汗で色が変わったTシャツを隠すように前を閉めた。


―――これで、少しはマシになったはず。


鏡で確認したかった。
あいにくそんな気の利いたものは、この公園にはない。


準備が整っても、すぐには足を踏み出せなかった。
横断歩道を渡ったら、そこが目的地だというのに。


悠太は一旦ベンチに腰かけると、大きく深呼吸をして空を見上げた。

月と、やたら明るい星がひとつだけ見える。

月はほぼ満月で、どこかいびつに見えなくもないが、乱視のまじった悠太の肉眼ではそれ以上は分からなかった。

星は、多分金星だろう。
一番明るい星が金星だと、もし空にひとつしか星が見えないならそれは十中八九金星だと、昔彩萌が言っていたから。


そのまま目を閉じると、月と星の残像が消え、フリージアがまぶたに浮かんだ。


―――行こう。
< 181 / 301 >

この作品をシェア

pagetop