LOVE or DIE *恋愛短編集*
「屋台めぐり、楽しいよね」

彼女は楽しそうに話し続ける。


何が好き?
私はタコ焼き。
でも青ノリが歯につくのがヤなんだよねぇ。
私ね、浴衣着ていくんだ。
悠太くんは?
男の子の浴衣も、カッコいいよねぇ―――


半ば上の空で聞き流してしまった悠太だが、重要な単語が耳に入ってきたことに気付き途中で頭を切り替える。

「どの辺で見る予定?」

一緒に行けなくても、花火会場で会えるかもしれない。
佳織は『浴衣を着ていく』と言った。
見慣れたコンビニの制服でも、ただの私服姿でもなく、【浴衣】。

これが悠太の心をくすぐらない訳がない。

「多分、川の西側かな。毎年屋台がいっぱい出てるところ、ちょっと川上に行った辺りが空いてるの」

「へえ、穴場なんだ。じゃあ、俺たちもそこらへんにしようかな」

あたかも誰かと約束しているような言い方で、会場で偶然出会っても怪しまれないようにそう言った。

少々考えていた方向とはずれたが、コンビニの外で彼女と会いたいという願いは叶うかもしれない。



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