Fake love(1)~社長とヒミツの結婚契約書~

―怜side-

「三鷹市は都会と郊外の良さを両方兼ね備えた街です。子育て環境に重点を置き、その結果…若いファミリー世代の割合も増える一方。我が三鷹店の建物も老朽化し、リニューアルするには頃合いの時期だと考えています」


俺は三鷹店のリニューアルと三鷹駅周辺の再開発に便乗して、市内に小規模のスーパーをオープンする計画を進行させていた。




帝和銀行本店に足を運び、頭取室で融資の話をしていた。



伊集院頭取の隣に座っていた敦司さんが立ち上がり、内線電話を取る。



「神楽坂会長あてに外線?相手は??…判った」



敦司さんは電話を保留にして、俺を呼んだ。



「お話中失礼します。神楽坂社長あてに東亜医科大付属病院の産科医・槇村先生から外線は入っております」



「!!?」



紗月はまだ…9ヵ月…

産気づくには早いだろ!?


俺は電話に出た。



「お電話代わりました。神楽坂です…」


―――――神楽坂社長…落ち着いて訊いて下さい…奥様が早期胎盤剥離を起こしています。今から…緊急帝王切開で赤ちゃんを取り出します



「早期胎盤剥離って何ですか!?」



「先生!!?神楽坂さんが!!?」


電話の向うでは看護師の切迫した声で槇村先生を呼ぶ声が聞える。



―――――説明している時間はありません…母子と共に危険な状態なので…至急病院に来てください!!



落ち着いていた槇村先生の声にも焦りの色が。


槇村先生の電話は一方的に切れてしまった。

< 282 / 355 >

この作品をシェア

pagetop