キミと帰る道





その言葉が妙に悔しくて。
俺はあんたなんて知らないって言いたかったけど、そんなこと言えなくて。





…だってそのときから、人のことを覚えられないっていう自覚はあったから。





だけどそのままイライラしながら、帰路についていると。





俺は…たぶん赤信号を渡っていたんだ。
隣で華菜がなにか言ってるのはわかってたけど。




俺がどうして人を覚えられないか考えてるのに夢中で。





気が付いたら耳に大きなブレーキ音が聞こえて。





……なぜか俺だけが助かったんだ。





———





「———だから、俺は華菜の命を奪ったから。 これ以上母さんたちに迷惑はかけたくないんだよ」





かなり長い話だったのに。
逢原は俺に向けて痛いほど視線を送りながら、コクコクと頷いて聞いてくれていた。




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