嫌われ者に恋をしました
時々気になって左手の薬指にはまっている指輪を触った。すると瀬川はいつも「気になる?悪い子だね」と言った。
私は悪い子だ。奥さんがいる人とこんな関係を続けていて。この人には家庭があって、もしかしたら、私はそれを壊してしまうかもしれないのに。私たちの関係を知ったら、奥さんは深く傷つき怒るだろう。別れるというかもしれない。
人の人生に関わって壊してしまうなんて、とても怖ろしい。奪い取りたいなんて思わない。でも、一人にされるのも怖い。
本当は一人でよく泣いていた。でも、雪菜が泣くと瀬川は機嫌が悪くなるから、瀬川の前では泣かなかった。
瀬川に利用されていることはわかっていた。それでも、捨てられることが怖かった。たとえそれがどんな関係であっても、人の温もりを知ってしまった以上、一人きりに戻るということが、深海に引きずり込まれて圧死することのように怖ろしく思えた。
それなのに、一年も経たないうちに瀬川の足は雪菜の家から遠退き始めた。そのうち瀬川は受付の子と噂になって、その頃には雪菜の家にはまったく来なくなっていた。
せめて自分の誕生日に会えないかと思って電話をしたが、結局瀬川は来れなくなった。来れなくなったのではなく、来なかった。
雪の中一人で泣いた。でも、凍える寒さの中で冷たい空気を肺に感じて、やっと一人に戻る覚悟ができた
瀬川に会いたかったわけじゃない。一人きりになることが怖かったんだ。その時やっと、それに気がつくことができた。
だから、雪菜はその後自分から瀬川に別れ話をした。瀬川は恩着せがましく「仕方ないね」と言って二人は別れた。
もう、一年半以上前の話。