嫌われ者に恋をしました

「なんとでも言えよ。どうせ瀬川から聞いたんだろ」

 そう言われて、雪菜は瀬川から話を聞いた時の感覚を思い出した。もし自分だったら、と思った時のあの感覚。

 式場もマンションも、彼女との未来を夢見て見に行ったに違いない。そんなたった一人の愛する婚約者が、他の男の所に行ってしまうなんて。どんなに苦しくて辛かっただろう。

 それなのに。私、あんなひどいことを言ってしまった。どうしよう……。きっと、目の前のこの人はまた辛い気持ちを、胸の痛みを思い出しただろう。

 雪菜は自分が隼人に言われたことも忘れて、隼人の気持ちに深く感情移入してしまい、胸が苦しくて、鼻の奥が痛くなって涙がこぼれてきた。

「……ごめんなさい。私、松田課長を、傷つけるようなこと……言ってしまって」

 急に泣き出した雪菜を見て、隼人がうろたえているのはわかったが、雪菜は感情を抑えられなかった。

「いや、……俺は、別に」

「私、ひどいことを……」

「い、いや。俺の方が、先に言い始めたから」

「……すみません。こんな……」

 隼人はバタバタとスーツを叩いてハンカチを探しているようだった。
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