嫌われ者に恋をしました

 雪菜はバッグからハンカチを取り出して目に押しあてた。

「本当に、すみませんでした」

「いや、俺の方こそ、ごめん。……小泉、大丈夫か?」

「私は、大丈夫です」

 ハンカチを目にあてたまま、雪菜は静かに言った。でも内心は大パニックだった。

 ……どうしよう。あんな傷つけるようなことを言った上に、感情的になってしまった。私は感情を出したらいけないのに。このまま課長が死んでしまったりしたら……、どうしよう。

 そう思ったら怖くなって、嗚咽が止まらなくなった。

「松田課長が死んじゃったらどうしよう……」

「はあ?そんなわけないだろ。不吉なこと言うなよ」

「でも私……」

「お前に言われたくらいで、死ぬほど傷つくわけがないだろ」

「……」

「俺、そのくらいで死なないから。大丈夫」

 そう言われて、雪菜は何度も深呼吸をして、なんとか落ち着きを取り戻した。

「……もう、冷めちゃったけど。どうぞ」

 隼人はばつが悪そうにそう言ったが、雪菜にはもう食べる気力なんてなかった。
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