嫌われ者に恋をしました

 パソコンを開いてパスワードを入れたら、のぼせていた心が少し落ち着いて、仕事の感覚が戻ってきた。

 雪菜は深呼吸を一つして、気持ちを切り替えた。……仕事しよう。

 会議に向かった隼人を見送ってスケジュールを確認した。

 日程調整の連絡をしてしまおうか。でも、休み明けの会議でスケジュールが変更になることも多いから、まだやめておこう。

 日程が確定している訪問先の資料をまとめてリストを作った。

 監査当日、仕事が円滑に進められるよう事前に資料を見やすくまとめたり、終わった資料を後から探しやすいようにまとめたりする作業は好きだ。

 地味にこっそり丁寧にする仕事が、自分には向いていると思う。それも、やると決めた時間内にできると充実感がある。

 完全に仕事の感覚を取り戻して、テキパキ作業をしていたら、隼人が会議から戻ってきた。隼人は席につくと、口を開いた。

「急なんだけど、予定を大幅に繰り上げることになったんだ。スケジュールを見直さないといけない」

 それを聞いて、日程調整の連絡をしなくて良かったと思った。

「どのくらい早まるんですか?」

「年末までに全部終わらせることになったよ」

「そんなに……」

 これは忙しくなりそう。でも、雪菜は気力が充実していて、少し忙しいくらいたいしたことはないと思えた。
< 301 / 409 >

この作品をシェア

pagetop