嫌われ者に恋をしました
隼人の言葉を聞いて、賀谷営業所の所長がニコニコと笑顔のままこちらに顔を向けた。でも雪菜にはその目が笑っていないように見えた。
「私らが疑われるようなことしてるって言いたいのかな?」
「疑われないために、誰が見てもおかしくない明瞭な経営になるよう改善してください、と申し上げているんです」
「なるほど、それはそうだね」
「ご存知の通り、監査が各営業所に入ることになったきっかけは、一昨年度に立て続けて起きた金銭管理の不祥事です。監査はリスクマネジメントの一つとして導入されました。会社の損失を回避するために私たちはこうして監査に来ていることをご理解いただければと思います」
あんなに柔らかい雰囲気だったのに、息をするのもやっとなくらいピリピリした雰囲気になってしまった。でも、何もなければこんな空気にはならない。考えたくないけれど、やっぱりやましい所があるんだろう。
こんな殺気が膨らんでいる所にじっと座っているなんて耐えられない。雪菜が恐る恐る隼人を見上げると、隼人は全く動じることなく平然としていた。どうして平気なんだろう。
この人、こんなことばかりしていたら、いつか誰かに逆恨みされるんじゃないかな。変な人に刺されたりしないだろうか。誰かに刺されて課長が死んでしまったらどうしよう……。そう思ったら、怖くて怖くてたまらなくなった。