嫌われ者に恋をしました

「実際に監査に入るのは決算が終わってからになるから」

 一瞬、別の空間に思いが飛んでしまっていた雪菜は、隼人の声にハッとした。

「決算が終わるまでは今までの業務をそのまま継続して。新人が配属されたら担当替えがあるから、そのタイミングで監査に来てもらう」

「はい」

「監査は週に1回から2回だけど、事前調査をして、当日の監査があって、その後報告書の作成をするから、スケジュールはかなりギリギリで忙しいと思うよ」

「はい」

「基本的に昨年度分の経理監査だけど、大きな営業所の場合は総務課も合同で行くことがあるから。その場合は総務課と日程調整して。6月と7月の分は調整済みだから、8月以降は小泉に周知や日程調整をお願いすることになる」

「わかりました」

 メモを取りながら淡々と答える雪菜をじっと見て隼人は少し首をすくめた。

「何か質問は?」

「いえ、今は特にありません。資料を見て、わからない事が出てきたら確認させていただきます」

「わかった。忙しいのに時間をとらせて悪かったね。……みんなが嫌がるからっていうのも全くないわけじゃないけど、君の仕事ぶりが評価されたから監査担当に入ってもらうんだ。よろしく頼むよ」

「わかりました。失礼します」

 雪菜は表情を変えずにそう言って一礼すると会議室を後にした。
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