嫌われ者に恋をしました

 雪菜があまりにも無表情だったから、つい評価を口にしてしまって、隼人は少し後悔していた。実際、雪菜を監査担当にしたのはみんなが嫌がるからではなく、去年、監査をした時に、雪菜が一番向いていると判断したからだ。

 雪菜は理解が早く、ポイントを的確に掴んで要領よく仕事をこなしていた。営業所の連中から何か言われても全く動じることもなかった。

 他の子たちのように、あからさまに機嫌悪くいい加減に仕事をされるよりは、愛想がなくても淡々と仕事をこなしてくれるに越したことはない。

 それにしても、普段からあんなに無表情だったか。……まあ、そうだったかも。改めて近くで見る雪菜は「クール」というより「無表情」という表現がぴったりだと感じた。男性社員から『人形みたいで怖い』と揶揄されるのもうなずける。

 あえて目立たないようにしているかのような地味なスタイルだが、近くで見ると白い頬に黒い瞳が映えて印象的だった。

「松田、小泉は渋々渡すんだからな」

 片倉が声をかけてきた。

「ありがとうございます」
< 8 / 409 >

この作品をシェア

pagetop