ずーっと待ってるよ。
☆4☆
あれから何時間たっただろうか……。空も若干白んできている。服も手も顔も土だらけだが、私の目当ての物は未だに見当たらない。
信じたくない。ここには何もなかった事にしておきたい。
でも、見つかっていないのなら…。可能性は否定できない。

―チリン
不意に聞き覚えのある音が指に触れた。音の鳴った物がある周りを手でかき分けていく。
見たくなかった。知りたくなかった。
それは白い白骨化した小さな手だった。手首には鈴のついた紐がついていた。そして、その鈴には見覚えがあった。それは私と同じ……。

「ずっと…ここで待っていてくれたんだね」
視界がぼやけてきた。胸から何か痛いものがこみ上げてくる。
「十年も…ずっと…ここで……私が帰ってくるのを待っててくれたんだね…」
涙と共に嗚咽(おえつ)も出てくる。ユウコさんに言われた時には泣けなかったのに、真実を見てしまった以上、泣くことしかできなかった。

「約束…守って、くれたん、だね。あり…がとう。ありがとう。」
私は土がついているにも関わらず、両手で顔を覆った。
ずっと、ずっとその場で泣くしかなかった。
悲しい気持ちもあったが、同時に嬉しい気持ちもあった。ずっとずっと、約束だった【桜の木の下で待っていて】くれたから。

光君は、夢でずっと教えてくれていた。私を導いてくれていた。ずっと夢で教えてくれていたのに、早く気づくことができなかったのが何よりも悔しかった。

日が昇り、ユウコさんが高台に来るその時まで、私は鈴のついた白い手を握りしめながら泣いていた。
< 5 / 6 >

この作品をシェア

pagetop