今夜、きみの手に触れさせて
「わたしもね、青依は男子とつきあうの初めてだから、優しい子じゃないと困るって言ったんだよ」
律ちゃんはそう言ってわたしの顔を覗き込む。
「そーしたら北見くんてば、うれしそうに笑って、
『それならちょうどいいや。純太はオレの友だちの中で、一番優しいやつなんだ』
なんて言うからさぁ、つい引き受けちゃった」
と律ちゃんは鼻の頭をかいた。
「じゃ、断っとくね」
そうしていつもと変わらない優しい笑顔で、律ちゃんはこの話をおしまいにした。
「あの……会うのって、ふたりっきりなの?」
そんな律ちゃんにちょっと聞いてみる。
「え、ううん。青依がOKなら、今日の帰り、わたしと一緒に矢代くんちに行くことになってんの。部活が終わったら北見くんも駆けつけるって」
「あー、じゃあ、1回だけ会ってみようかな」
律ちゃんと一緒だし。
おずおずとわたしが言うと、律ちゃんの顔がパッと明るくなった。
「えっ、いいの? 青依」
「うん。会うだけなら」
ふふ、やっぱ遠慮してたんだ。