今夜、きみの手に触れさせて
不安に押しつぶされそうで、早足になる。
並びの家を次々通り越し、曲がり角をひとつ曲がったところで足を止めた。
あんまり行き過ぎて、行き違ったりしたらマズイもん。
ぼんやり突っ立って空を見あげた。
曇ってるのかな?
今夜は月が出ていない。
この道は駅へ行くのとは反対方向だから、ちょうどよかった。
お父さんと鉢合わせずに済む。
「あ」
純太くん……?
少し先のほうで、暗闇から街灯の灯りの下へ、ひょっこりと人が現れた。
「あれ? 迎えに来てくれたんだ?」
人懐っこい笑顔が今度は逆光になって、仄暗いこっちに近づいてくる。
「う、うん」
あんまりいつも通りの純太くんだから、拍子抜けしてポケッとしていた。