今夜、きみの手に触れさせて
「あしたテストがあるんだけど、教科書忘れちゃったから友だちに借りにいく」
「まぁ」
お母さんはイヤそうだったけど、テストとなれば認めざるを得ないみたい。
次の言葉が出てくる前に、さっさと靴を履いて外へ出た。
フー……。
うまくウソがつけたって、ちっとも気持ちよくはない。
だけどあーでも言わなきゃ出してくれないもん。
家の前で待ったりはせずに、純太くんが来るだろう方向へと、わたしは歩き出した。
お父さんもそうだけど、家の前で純太くんといたら、ご近所の人に目撃されちゃう。
おせっかいにもお母さんにチクられたりしたら困るから。
そうして――
歩きながら考えていた。
『話』って何?
家をどう出るかで頭がいっぱいだったけど、純太くんが話したいことって、何なんだろう?
こんな時間に、わざわざ呼び出してまで……。