今夜、きみの手に触れさせて
前の彼女とも、こんなふうにデートした?
ん? デート……かな、これ。
だけど大きな手は、ずっとわたしの手を柔らかく包み込んでいて、
これから別れ話をするって感じではなさそうだった。
自動車が通る度に、ヘッドライトがわたしたちを照らしていく。
闇に浮かぶわたしたちって、車の中からはどんなふうに見えるんだろう?
こんな時間に手をつないで歩いている……高校生に、見えるかな?
知り合いが通らなければいいんだけど……。
ライトで照らされる度に、身の縮む思いがして、思わず顔を伏せながら歩いた。
国道は大きなカーブを描いていく。
えっ?
そのカーブに差しかかったとき、目の前の闇に浮かびあがったのは、ライトアップされたラブホテルの看板だった。
ま、まさか、ちがうよね?
こんなとこ行かないよね、純太くん?
『ひとりじゃ行けねーとこ』ってつぶやいた純太くんの声が蘇る。
そ、そーゆー意味じゃないよね?
涙がじわっと浮かんできて、目の奥と喉の奥がカーッと熱くなった。
ム、ムリだよ? わたし、絶対にムリ……!
そう思ったとき、純太くんの手がスルリと、わたしの手を離した。