今夜、きみの手に触れさせて


前の彼女とも、こんなふうにデートした?


ん? デート……かな、これ。


だけど大きな手は、ずっとわたしの手を柔らかく包み込んでいて、


これから別れ話をするって感じではなさそうだった。




自動車が通る度に、ヘッドライトがわたしたちを照らしていく。


闇に浮かぶわたしたちって、車の中からはどんなふうに見えるんだろう?


こんな時間に手をつないで歩いている……高校生に、見えるかな?


知り合いが通らなければいいんだけど……。




ライトで照らされる度に、身の縮む思いがして、思わず顔を伏せながら歩いた。




国道は大きなカーブを描いていく。




えっ?




そのカーブに差しかかったとき、目の前の闇に浮かびあがったのは、ライトアップされたラブホテルの看板だった。




ま、まさか、ちがうよね?

こんなとこ行かないよね、純太くん?




『ひとりじゃ行けねーとこ』ってつぶやいた純太くんの声が蘇る。


そ、そーゆー意味じゃないよね?




涙がじわっと浮かんできて、目の奥と喉の奥がカーッと熱くなった。




ム、ムリだよ? わたし、絶対にムリ……!




そう思ったとき、純太くんの手がスルリと、わたしの手を離した。



< 390 / 469 >

この作品をシェア

pagetop