今夜、きみの手に触れさせて


「飲む?」


と聞いて、純太くんは道端の自販機のほうへと歩いていく。


お金を入れてボタンを押し、自分の分の缶コーラを取り出してから、純太くんが振り返った。


「飲む?」


もう一回聞かれた。




「う、ううん」


急いで首を横に振る。


何も喉に通らないよ。




コーラをプシュッと開けながら、純太くんが戻ってくる。


ど、ど、どうしよう……。




「青依ちゃん……」


純太くんの手が伸びてきて、再びわたしの手を取ろうとしたとき、触れた指先を思わず引っ込めてしまった。


「え、」


純太くんは驚いたように、わたしを見る。




「ど、どこ行くの?」


すがるような気持ちで問いかける。






「……ここ」




純太くんはそう言うと、ちょっと気まずそうに視線を落とした。


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