今夜、きみの手に触れさせて
家に入った途端、飛んで出てきたお母さんにめちゃくちゃ怒られた。
「こんな時間まで、何してんのっ」
肩を掴んで揺すられる。
「う……るさいなぁ、もう放っといてよ」
そう言い捨てて、階段を駆け上った。
階下からお母さんがギャーギャー怒鳴ってんのが聞こえる。
お父さんはまだ帰ってないみたいだった。
そのままベッドに入り、布団にもぐる。
もう、やだ……。
『じゃーな』
静かに言った声。
伏せたまつ毛。
ニコリともせずに、スッと、離れていった視線。
純太くんのあれは、きっと別れの言葉だった。
透き通った瞳に、もうわたしが映ることはないんだ。
そう思うとめちゃくちゃ悲しかった。
でも……
結局、純太くんとわたしじゃあムリだよね。
純太くんにとって、わたしは『じゃーな』で終われる子なんだもん。
わたしだって、純太くんについて、ホテルへ行くことはできなかったじゃない。
仕方ないよ……。
そう思うのに、なんでこんなに涙が止まらないの?
自分の気持ちまでわかんなくなって、布団の中でいつまでも泣いていた。