モテるんは俺の趣味やっ!
「とにかく!!」






たっちゃんが勢い良く立ち上がった。




そして、月に向かって大声で叫ぶ。






「そいつは、ほんっまに最っ低の、器がネズミのお猪口くらいしかない、ごっついしょうもないやつやったんや!!


せやからミサキは、そんな最低男のことは蜂に刺されたどころか、しょっぼい蚊ぁにでも刺されたくらいのもんやと思うてええねん!!


そいつのことはきれいさっぱり忘れて、自分に自信もって、自分のこと大好きになって、ついでに人のこともちゃんと好きになって、生きていけばええねん!!」






「………そらどーも。


せやけど、近所迷惑やから、ボリューム下げてな」







たっちゃんは振り向いてあたしを見下ろし、けたけたと笑った。







………それにしても。




あたしは、たっちゃんが人のことを悪く言うのを、このとき初めて聞いたのだった。





それがあたしのためだということに、あたしは少し、こそばゆい思いがした。





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