憂鬱なソネット
「…………寅吉のバカ………」




思わず洩れた呟きに、巧がぎょっとしたようにこっちを見た。



神父さんの耳にも届いてしまったらしく、「え?」というように眉を上げている。




あたしは慌てて「いえ、何も」と小さく否定したものの、


やっぱり、胸の中のもやもやは消えてくれない。




こんなはずじゃなかったのに。



あたしの隣に白いタキシードで立っているのは、弟なんかじゃなかったはずなのに。




「それでは、次は指輪の交換です。

新郎は新婦のベールを上げて」




そのとき。




ーーーーーバタバタッ




突然、チャペルの入り口のほうから大きな物音がした。




神父さんは言葉を止め、みんなが一斉に後ろを振り向く。



あたしと巧も、つられたように振り返った。




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