憂鬱なソネット
みんなの驚愕と混乱をよそに、寅吉は足早にヴァージンロードを歩いてくる。



いつも猫背で、のそのそと歩く寅吉が。


足早に歩いている。




あたしはぽかんとして寅吉を見つめていた。




「…………あやめさん!」



「………え?」



「その男、誰!?」




寅吉は、あたしの隣に立つ巧を指差して、眉をひそめて叫んだ。



不機嫌な顔をしている寅吉なんて初めてで、さらに驚いてしまう。



寅吉はだいたい、無表情か、のほほんと笑っているかのどちらかなのだ。




………って、いや、そんなことは今どうでもよくて。




「誰だ、お前はーっ!」



「ちょ、ちょっと、寅吉!」




今にも掴みかかりそうな勢いで巧ににじり寄っていく寅吉の腕を、あたしは必死でつかむ。




「誰って、それはあたしの弟! 巧!」



「………へっ?」




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