憂鬱なソネット
………もー、ほんとに。



変なやつだよ、こいつは。





そういえば、『詩集は出してない』とか、『詩は公開してない』とか言ってたね。



あれは、旅の本は出してるけど、っていう前提があったわけか。





なるほどねぇ。






「ーーー寅吉の本、読んでみたいな」






あたしが無意識のうちに言うと、寅吉はずいぶん嬉しそうに笑った。






「え、読んでくれるの?


じゃあ、今度もってくるよ」






その言葉に、あたしはちょっとどきっとしてしまう。



それを隠すように、あたしは不敵な笑みを浮かべて寅吉を見上げた。






「ふふん、今度ってことは、またあたしに会いたいってこと?」






からかうように言ってやったのに、寅吉は「うん」とあっさり認めやがった。







「あやめさんと話すの楽しい。


笑顔かわいいし。


あ、それに、その似合わない服じゃなくて、あやめさんが自分で選んだ服着てるの、見てみたい」








そんなことを、あっけらかんとした笑顔で言うもんだから。







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