憂鬱なソネット
だって、あたしはまだ、寅吉からプロポーズされたことを、家族に言ってなかったのだ。





なんか照れくさくて。




それに、二人の間であれ以来、結婚の話なんて出てなかったから……。





そんなまさか、こんなすぐにこういうことになるなんて、思ってもみなかった。






てゆーか、親に挨拶するときって、二人でタイミングの相談とかするもんじゃない!?






………いやだから、寅吉にそんな常識は通用しないんだって。





だって、お見合いのあと三ヶ月も音信不通で。



たまたま再会したとき、つまりたった二回しか会ってない状況で、「結婚してください」と真面目に言うやつなんだから。







そんな自問自答をあたしがしているうちに、寅吉は再びお父さんに「あやめさんをください」と繰り返していた。





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