憂鬱なソネット
呆気にとられた様子のお父さんが、ほとんど呆然と無意識のまま、






「はぁ、まぁ、こんな娘でよければ……」






と頷いた。




お母さんも口を半開きにしたまま、「ええ、まぁ、そうね……」と呟いている。







急展開すぎて完全についていけてないお父さんとお母さんとあたしをよそに、寅吉はひとり、「ありがとうございます!」と満面の笑みを浮かべていた。







「あの、俺、すぐにあやめさんと一緒に暮らしたいと思ってるんですが、よろしいでしょうか?」







まだ唖然としているあたしたちを置いてきぼりにして、寅吉はさっさと話を進める。





お父さんが「え? はぁ、どうぞ」とまた頷いた。






………なんか、締まりがないぞ、父。




大事な娘をそんな簡単に手放していいんですか?





まぁ、あたしもいい年だし、さっさと片付いてくれるならそれもよし、ってとこ?





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