憂鬱なソネット
「えーと、じゃあ、引越し、ね……。


ちなみにいつから一緒に暮らすの?」







いち早く気を取り直したお母さんが訊ねると、寅吉は「明日からでも」と即答した。





再び、一同、ぽかーん。





寅吉、あんたどんだけ気が早いの………。






「………え、駄目ですか………」






しょぼんとして訊き返す寅吉に、お母さんが慌てたように、






「いえいえいえ、べつに、駄目ってわけじゃ、ねえ? お父さん」






「えっ、あ、うん、うん………」






「いいんですか? わぁ、よかったぁ……」






寅吉が嬉しそうに笑った。





その素直な笑顔に、またあたしは、なんだかどうでもよくなってくる。





順序とか、時間とか、そんなの気にしなくていいか、みたいな。







「………えーと、あやめも、それでいいんだな?」







お父さんが確認するようにあたしに視線を向けてきたので、あたしは「うん」と頷いた。





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