憂鬱なソネット
寅吉の終電の時間が近づいてきたので、とりあえず今日はお開きということに。





寅吉のご両親へのご挨拶は、また日を改めて、ということで話がまとまった。






うきうきしたように玄関でスニーカーを履く寅吉に、あたしは言う。







「………えーと、これから、よろしくね………」






「うん。あやめさん、ありがとう」






「え?」






「俺と結婚してくれて、ありがとう」







寅吉がふんわりと笑った。




あたしもつられて頬が緩む。







「うん………こちらこそ。

今日はいろいろ、ありがとね」







寅吉がこくりと頷いて、スーツの上着を整えた。







「………そのスーツ、どうしたの?

そんなちゃんとした服、持ってたんだ」







「え? これ?

うん、やっぱり結婚の申し込みするなら、スーツかなと思って、買いに行った。


初めてスーツ着たから、なんだか慣れないよ」






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