憂鬱なソネット
「あの、ごめんなさいね、突然。

………あらあら、あやめさん、とってもきれいね」




寅吉のお母さんがあたしを見てすぐにそう言ってくれた。



あたしは「ありがとうございます」と頭を下げたものの、正直、この後の流れが気になって仕方がなく、

自分のドレス姿がどんな仕上がりかなんて、どうでもいい気分だった。




「ところで………寅吉はここにおりますかしら?」




予想通りの質問に、あたしは必死で作り笑いを浮かべて応える。




「いえ、あの………実はですね。

寅吉さんは朝からお腹の調子が悪くて……私だけ先に出て来たんですよ」




お父さんたちに言ったのと同じ言い訳をしてみる。



寅吉のお父さんお母さんが驚いたように顔を見合わせた。




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