憂鬱なソネット
「むっ、無理だよ、だって俺と寅吉さん、全然似てないじゃないか!」




巧がぶんぶんと首を振って逃げようとするのを、あたしは必死で引き止める。




「大丈夫だって!

身長はだいたい同じくらいだし!」



「顔が似てねーっつってんの!」



「顔なんて誰も見ないわよ!」



「見るだろ! 新郎の顔だぞ!?」



「基本的には後ろ姿とか横顔しか見えないって! 前向く時はうつ向けばいいのよ」



「変だろうが!」




巧は必死に拒否をしているけど、親族一同に囲まれて、もはや逃げ道はない。




「………堪忍しなさい、巧。

弟なんだから、お姉ちゃんのために一肌脱いであげて!」



「………まじかよ………」




お母さんの鶴の一声で、巧はしぶしぶ頷いた。




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