この思いを迷宮に捧ぐ
千砂は、苛立つ心と、こめかみを刺すような頭痛を鎮めるために、そっと痛み止めの薬を口に含む。
水で飲み込んでベットに横になるけれど、イライラする気持ちは落ち着かない。
黄生の女好きは、父からの遺伝かもしれない。
王妃が千砂の実母で、2番目の后が黄生の実母ではあるが、正式に婚姻関係を結んではいないものの、女性との噂が絶えない人だった。
初めて知った時には驚いたものの、男の人とはそういうもの、と母親が穏やかに言ったために、その台詞が刷り込まれてしまった。父親に嫌悪感を感じる前に、彼は死んでしまった。
母親が「国王」ではなく「男の人」と表現したせいもあるだろう。
それは、なにも宮殿という特別な場所に限ったことではなく、ごく一般的なものなのだと千砂が思い込むことになった。
だけど。
今、千砂は、黄生に感じる苛立ちや嫌悪感は、父に通じるものであることに気がついている。
だから、男は嫌い。
千砂は、痛み止めの効果が出てくるのを、ベッドで辛抱強く待ちながら、そう繰り返し思うのだった。