この思いを迷宮に捧ぐ
やはり王位継承について、大臣たちから、何かとせっつかれているらしい。その上でもこの軽率な振る舞い。やっぱり黄生は黄生だと、千砂は思う。

「国を継ぐつもりが少しでもあるなら、もう少し慎重に振舞ったらどうなの」

ごめんねと言われても、やはり気分が悪いもので、千砂はつい刺々しい口調になってしまう。


「ふふ。千砂は、逆にもう少し奔放に振舞うべきだね。男たちから『仮面のクイーン』って呼ばれてるの知ってる?男には、にこりともしないから。たまには愛想を振りまくといいよ」


「馬鹿馬鹿しい。もう部屋に戻りなさい」


どうして、黄生と話すと最後には怒り口調になってしまうのだろう。千砂は、自分を辛抱強い人間だと思っているからこそ、不思議だった。

どうしてだか、弟は私の、触れられたくないところに触れてくるのだ。


踵を返す瞬間に、女の子の怯えた表情が千砂の視界に入ったが、恐れているのはこちらの方だと言いたい気持ちになった。

どこの誰ともわからない女を、気軽に私の部屋に近づけるとは。

この国の荒れた状況も、千砂の警戒も、全く意に介さない黄生に、千砂は一層苛々させられるのだった。


「あは。怒っちゃった」

黄生はそう言いながら、女の子と引き上げて行った。


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