この思いを迷宮に捧ぐ
「やはり噂は国内に蔓延しております。いまや宮殿内にとどまらず、市井にも広がっている様子。密かに人をやって情報を集めてはいますが、なかなかこれという特定の人物にはたどり着けません」


この国は、腐りかけた船だと、常々思う。

「何かにつけて、合法でない金品や便宜を図ることが要求されて、しかもそれがまかり通っているようです」

去年、父親である先の国王が心臓発作で亡くなる前後も、家督争いで主導権を握ったのは、大臣たちだ。


千砂を最初から最後まで推したのは、文化大臣だけで、後は寝返ったり懐柔されたりして、誰が敵で誰が味方なのか、渦中の千砂にさえ全くわからないくらいの混迷ぶりだった。


「当然、汚職に手を染めている者は、ひとりではないのでしょう。根源がわかりにくいのもそのせいね」


ポツリとつぶやく自分の声も冷静すぎて、ため息さえ出ない。



幼い頃、大臣と同じテーブルを囲み、議論を戦わせる父親の姿に驚き、どこか怯えすらしていたのは、本当にこの私だろうか。

まさか、私自身が、あの頃の比ではなく荒れてしまった国政に身を投じ、大臣たちを糾弾せねばならないとは。

大臣たちの鋭い声に、決して動揺することのなかった父と同じ立場に、私がいることに対する違和感。それはまだ、消えることなく残ったままだ。

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