この思いを迷宮に捧ぐ
とうとう王子に足を向ける朱理を、千砂は見送る。
水都には悪いが、今転んでくれて助かったと思う。水都に手がかかるのも、朱理にとってはいいことなのかもしれないと、千砂にも理解ができた。美砂が死んでしまい、その後に妃の座についた朱理に対して、心ないことを言う者も多いだろう。
そんな中で、朱理自身が、美砂の死を悲しむ気持ちが強いなら、その痛みを和らげてくれるのが、水都なのかもしれない。
千砂はそこでようやく、自分のすぐそばで朱理たちを見守っている青英に気が付いた。
「水の国の女王は、お変わりありませんか」
彼女が式に姿を見せなかったのは、やはり翠を嫌うせいだろう。