この思いを迷宮に捧ぐ
翠が不意にそう真面目に付け足すから、千砂は胸が痛む。
男は、欲でできている。
長い間千砂は、そう思っていた。
出世欲、性欲、自己顕示欲、庇護欲、物欲…。そのどれが顕著に出るかというのは人によるだろうが、欲を持たない男はいないと思う。
ただ、この傍若無人で、どう見ても欲の塊のような翠には、実はそれをあまり感じない。
千砂を驚愕させたり、苛立たせたりする言動の底に、彼自身の欲が見えることはない。
ただ、思ったから言ってみただけ。気付いたからやってみただけ。
まるで子どものような動機が透けて見えるだけだ。