この思いを迷宮に捧ぐ
「刺された人物に関しては、裁判で罪状が明らかになりつつあります」
外務大臣の雇った弁護士を説き伏せるのは容易ではなく、千砂は有能な検察官を担当にするようひそかに手を回したくらいだ。
「有罪は間違いないでしょう」
にわかに空気が張り詰める。
外務大臣をかばい、晁登を糾弾する人間は、すべて自らの言動にやましいところがあるのではないか。さっきの恩赦に反対した議員たちの声の大きさはなんだと、千砂は叫びたい。
あのときの全員が、自分も何らかの汚職に加担していると告白したも同然だったりするのではないか。
「それに対し、刺した人物は、常より外貨を得る重要な産業を担っていた上に、今回のことで国を清めました。そのことに異論のあるものは、私の前ではっきりと進言なさい」
そう告げて場を見渡したとき、千砂は、ああ、やはり自分は父のような王にはなれないのだと、痛感した。
反発の空気は変わらないが、以前の侮ったり軽んじたりする様子は消え去り、むしろ畏怖し、関わるまいとする様子が目に付いたからだ。
「異論なしと認めます。よって、晁登の恩赦を言い渡します。直ちに彼を開放しなさい」
一瞬の沈黙の後、一角で起こったかすかなさざめきのような人の声が、ざわざわと全体に広がってゆく。
外務大臣の雇った弁護士を説き伏せるのは容易ではなく、千砂は有能な検察官を担当にするようひそかに手を回したくらいだ。
「有罪は間違いないでしょう」
にわかに空気が張り詰める。
外務大臣をかばい、晁登を糾弾する人間は、すべて自らの言動にやましいところがあるのではないか。さっきの恩赦に反対した議員たちの声の大きさはなんだと、千砂は叫びたい。
あのときの全員が、自分も何らかの汚職に加担していると告白したも同然だったりするのではないか。
「それに対し、刺した人物は、常より外貨を得る重要な産業を担っていた上に、今回のことで国を清めました。そのことに異論のあるものは、私の前ではっきりと進言なさい」
そう告げて場を見渡したとき、千砂は、ああ、やはり自分は父のような王にはなれないのだと、痛感した。
反発の空気は変わらないが、以前の侮ったり軽んじたりする様子は消え去り、むしろ畏怖し、関わるまいとする様子が目に付いたからだ。
「異論なしと認めます。よって、晁登の恩赦を言い渡します。直ちに彼を開放しなさい」
一瞬の沈黙の後、一角で起こったかすかなさざめきのような人の声が、ざわざわと全体に広がってゆく。