この思いを迷宮に捧ぐ
千砂は、父親と自分との間に、決定的な違いがあることを知っている。


それは、人間が好きか嫌いか、というところだ。

もちろん、父親は前者であり、自身は後者である。



父は、広く人に好かれる条件を備えた人物だった。

王室の気品が漂う端正な顔立ちに、意外な人懐っこい性格。

だからこそ、紛糾する議会を平和に収めることができたし、母親をはじめとする女性たちにも愛されて、3人の子どもに恵まれたのだろう。

それは、国を治めるには最大の武器であったと、今の千砂にはわかる。



異性も上手く味方につけたほうがいい。人間の半数近くが異性なのだから。


はあ。

そうは考えても、千砂はため息を付くことしかできなかった。



「陛下。幕が下りました」
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