秘密実験【完全版】



「あれ。そう言や、中野ちゃんは?」


 ピエロ男──額田が両手を頭の後ろに回したまま、部屋を見回しながら訊く。


 監禁部屋とは違い、ここは冷房が効いていて快適だった。



「夜食を作ってもらってる」


「夜食ゥ!? いいねー、俺の分ちゃんとあるかな?」


 額田の期待を込めた言葉を無視して、男は無線トランシーバーを手にした。



「……俺だ。用意でき次第、女の部屋に運べ」


 男の言葉を聞いた途端、額田が顔に落胆の色を浮かべる。



「何だよ、奴らのメシかよ~! ……って、あのオスガキには食わせないのか?」


「空腹も、身体的苦痛のうちに入る。極限状態までお預けだ」


「おぉ……。さっすが真さん! パネェな、やっぱり」


 額田は黄ばんだ歯を剥き出しにして、媚びを含んだ卑しい笑みを見せた。


 そして、ふと真顔に戻ると──


「でも、あいつら……もうかれこれ一日、何も食ってないんだよな? 成長期なのにカワイソ~。クククッ……!」


 再び、肩を揺らして笑い出した。


 真と呼ばれた男は腕と足を組み、二つの画面を飽くことなく見続けている。


 虎視眈々と獲物を狙う、肉食獣のような鋭い眼差しで……。


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