memory
七日目
「あの日、堺にいるおじいちゃんに早く会いたくて会いたくて、私が無理を言ってお父さんに裏山の近道をトラックで通ってもらってたの。」
歩きながら、僕の横でシルクは語り始めた。
「昔からおじいちゃんの作る竹細工が大好きだったの。電話で新しい作品ができたからって言われた時、すぐに見たくなっちゃって、早くおじいちゃんに会いに行きたかった。」
シルクは僕に手招きをした。シルクに近づいて下を見下ろすと、急な坂があった。
「そして、ここで事故が起こった。」
「車がぶつかったんだっけ。ちょっと思い出したよ。車が衝突して、2台とも坂に転落して僕は死にかけだった。」
そこに、彼女が助けに来てくれたんだ。
「うん。お父さんは動かなかったし、相手の運転手はもう助からなかった。けどね、男の子の姿が見えたから、助けなきゃって思ったの。」
シルクは僕の手を引っ張り、空洞化した場所へ導いた。向こうへは光がさしていた。
洞窟を抜けて、そこにあるものを見て、息をのんだ。そこには大きな大樹があって、その下に自分がいた。自分は樹の根に取り込まれているような形でそこに存在してなおかつ目を閉じていた。けれど、驚いたのはそれだけではなかった。自分を取り込んである樹をよく見ると、人の顔らしきものが樹に映っていた。シルクだった。
「安全な場所を探していたら、たまたまここにたどり着いたの。それで、声が聞こえてきたの。」
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