それでも僕は君を離さないⅡ
「坂下を覚えてる?」

ふと口に出た。

「坂下?透吾さんのことですか?」

俺にとってこの現実は残酷すぎた。

奈々を見つめるにはつらすぎて背を向けた。

俺は窓の外に目をやり歯を食い縛った。

彼女は何も悪くない。

元はと言えば

俺が旅行に参加するよう説得したんだ。

なぜこうなる?

どうしたらいい?

担当医と話すしかない。

「奈々、しばらく体を休めた方がいい。あとでまた来るよ。」

俺は彼女の頬にそっと手を添えて

親指で軽く撫でた。

できればキスしたかった。

だが今は控えた。

「あの、あなたの名前を教えてください。」

「笹尾忍。君が愛した男だ。」

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