雨のち晴れ


「分かった、それだけで十分だ。大丈夫だからな、紗子。今すぐ行く。」

「うん…」

「近くに街灯があれば、そこにいなさい。大丈夫だから。」

「うん…」

電話を切り、私はよろよろと立ちあがる。


また一人になってしまった気がして、恐怖に襲われた。

身体の震えが止まらない中、少し歩いて小さな街灯にもたれた。


お願い、正樹。早く来て。

そう祈りながら、私は体を小さく丸める。


こんなに怖いことは今までなかった、とにかくそれ以外考えられなかった。



しばらくして、遠くから「紗子っ…!!」という正樹の声が聞こえた。

私がゆっくり顔を上げようとした時に、視界がはっきりしないまま、抱えるようにきつく抱きしめられた。

「ま、さき…」

私は正樹の香りを感じた途端、再び涙を流した。

「ごめん、紗子。ごめんな…」

なぜか正樹は何度も謝って、頭をポンポンと触った。

「守ってやれなくて、ごめん。」

「……っ」

私は自然と、正樹の首に手を回した。


暖かかった。

こんなにも安心する正樹の声、そして優しい温もり。


身体の震えは、嘘のように止まっていた。

「正樹…」

私は、正樹の顔を見る。

正樹の顔は今にも泣きだしそうで、でもやっぱり綺麗な瞳をしていた。


正樹なら、きっと信じることが出来る。


ううん、違う。

もう私は正樹のこと、信じ切ってるんだよね。


私は涙でぐちゃぐちゃな顔を、正樹の胸に押し当てた。


< 48 / 173 >

この作品をシェア

pagetop