仲良し8人組
だがそこまでひなが考えた時、おじさんが話し出した。
「私は名前なんて捨てたよ…と言いたい所だけどね、それも失礼だからね。私はサトシ。この辺りの人にはサトさんと呼ばれているよ」
「サトさん…ですか」
「こんなに若い女の子にサトさんと呼んでもらえて光栄だよ」
「はぁ……」
名前は捨てた。そうケロッとした顔で言ってしまうおじさんことサトさん。
ケロッとした顔をしているが、フルネームで名前を言わない所を見ると、やはり余り聞いて欲しい事では無いのだろう。
この後に何から聞いていけば良いかが分からず口を閉じ、そのままサトシの顔を見続けるひな。
サトシはひながそうなる事が分かっていたのかニコッと微笑むと話を切り出した。
「神崎さん。君は、この世界が君の中にある記憶から3年経過しているって事には気付いたかい?」
「は、…はい。新聞で気付きました。これは、夢…じゃないんですかね?」
夢…だったらいい。夢であって欲しい。
これは、嫌な夢なんだ。
そう思いたいのに、ひなの希望も虚しくサトシは首を横にふる。
「夢の様で夢じゃない。君は3年分の記憶を自分が失っていると思っているんじゃないかい?」
「あっ、はい。夢じゃないのなら、記憶喪失とかかと……」
そうひなが言うと、サトシが真剣な目で真っ直ぐひなの目を見つめて口を開いた。
「神崎さん。君は記憶喪失なんてなっていないよ」