絆物語~クールな教師(アイツ)と狼少女の恋~

七日後。

『合格おめでとうシルフィ! 面接は問題のある人をみつけて落とすだけのものだったんだもの。次の人を間違って不採用にしたってことは、シルフィは絶対合格だよ!』

「へへ~ん、言ったでしょ、受かるって」

『今日はお祝いだね! 何食べる?』

今日は合格発表が掲示される日だ。郵便システムのないこの時代、こういった発表は掲示が原則だった。

シルフィ、プチ、シャドウの三人はそれを見るため、再び中央妖精大学校へと向かっていた。広場を抜け人もまばらになった道を、一人と一羽がうかれながらゆく。その後ろをシャドウが難しい顔をしながらのそりのそりと歩いている。

やがて金色にそびえる立派な門が見えてきた。門前には槍を持った二人の門番がぴしりと背筋を伸ばして立ち、その横に掲示の立て札が見える。シルフィはそれを見るなりいてもたってもいられず駆け出した。プチもそれを追って飛ぶ。

『シルフィ~、走らなくても合格は逃げないよ~アハハハ。…あれ、シルフィ、どうかした?』

プチがそう問いかけたのは、シルフィが目を瞠り凍りついたように固まっていたからだ。そしてその問いかけの答えを、プチもすぐに知ることとなる。

『あ…れ…?』

合格者は、19名。

その名前の羅列の中に、何度目を走らせても、“シルフィ”の名はなかったのだから。

『名前が…ない…? これってええと…どういうこと? ミスに気づいて…?』

「………………」

一人と一羽は色を失くし、立ち尽くす。

遅れて掲示板の前にやってきたシャドウだけが表情を変えなかった。この結末にうすうす勘付いていたのだろう。

シャドウはシルフィの服の裾をくわえ、帰るよう促した。その目はこう告げていた。“嬢、やはり嬢が思っているほど社会は甘くないのだ。さあ、森へ帰ろう”と。

シルフィは数瞬、瞼を閉じた。そして瞼を開いた時には、もうその表情から動揺は消えていた。かわりに不敵な微笑みがあった。

唐突な微笑みの理由がわからず、プチは思わず『シルフィ…?』と声をかける。

シルフィは微笑んだまま二匹に視線を送ると、はっきりとした声で宣した。

「プチ、シャドウ。あたし、これくらいで諦めるつもりはないよ! 見てて!」
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