みんな病んでる。
ドッヂボールというのは、殺人的ゲームだ。

ひとにボールを当てても構わないんだ。いや、そういうルールなのだ。

ゲームでなければ、ただのいじめに等しいだろう。

ひとにボールをぶつけるのが正当化されるなんて、なんて野蛮で面白いスポーツなんだと思う。

ひとり、またひとりと、俺は全力で相手チームの輩にボールをぶつける。

「さすが! リョウ、ナイスプレー!」

同じチームの男子が、俺に声をかける。

別に、ナイスプレーを狙っているわけではない。

ひとにボールをぶつけて、楽しんでいるだけなんだ、俺は。



「昨日言ってたわよね。リョウくん、問3を答えて」

大学を卒業したてのような、若い女の英語教師が俺を名指す。

「……」

「どうしたの? 宿題にしてたでしょう?」

「やってきませんでした」

俺は下手に出てやった。

「やってこなかったの? どうして?」

いかにもか弱そうな教師だ。

俺は、ばん! と机を叩いた。

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