みんな病んでる。
私たちは黙々と髪の毛を拾った。

やがて、総て集め終わると、サツキは何も言わずに、そのまま立ち去った。

クラスの人気者のサツキに、見られた。

彼女が、こんなものを集めていたと、私のことを吹聴して回ったら……。

私は、ますますバカにされる。

そんな思いが胸を掠った。

けれど、サツキはきっと黙っていてくれる。

去り行く彼女の背中を見て、何故だかそう感じた。



あ~、もう、誰もいないじゃないか。

私はパタパタと放課後の廊下を走っていた。

明日、英語の小テストがあるのに、教科書を教室の机の中に忘れてきてしまったのだ。

秋が深まるこの季節、もう外も校舎内も薄暗い。

ちょっと怖いので、私は走って自分の教室へと舞い戻っていた。

……あれ?

うちのクラスだけ、明かりが点いている。

訝しがりながらも、私はドアをそっと開け、教室の中へと入った。
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