五つの顔を持つ私
幹部達はなに言ってんだろ~?
ジィッーと眺め回され気持ち悪い。
しばらくたって口を開いたのはあっちだった。
「まさかこんなところでお目にかかれる日が来ようとはね。黒木麗、いえ、ルシファーと言った方がいいかしらね」
やっぱ感ずいてたか。
ま、あれだけのヒントを与えてやったんだから当然か。
でもなんで…。
「なんで本名知ってる」
「あら、雰囲気も口調もしゃべり方もガラリと変わるのね」
さっきとはまるで別人みたいだわ、と話すサタン。
イライラする。
「どいせ本名じゃないんでしょ。名前なんていくらでも自由自在に変えられるわ」
確かに…。
私にはたくさんの名前がある。
それらを使いこなしてる。
「お前も…?」
「当たり前じゃない。本名は百合よ」
「そんな簡単に赤の他人に自分の情報を与えていいのか」
殺し屋という職業柄、どんな些細なことでも自分の情報を与えてしまうのは命取りだ。
情報を渡すときは金か交換条件が必ずつきまとう。
無償で情報をくれるというのはありえないこと。
それがこの世界だ。
「いいのよ。あなたにはね」
意味が分からない。
「あなたとは仲良くできそうな気がするし」
「仲良く?冗談じゃない」
私は鼻で笑った。
「この世界にいる限り誰とも仲良くすることはできない。そんなあまっちょろいこと言ってるようなら殺し屋なんてやめちまいな」
「分かってるわ。私だって世界レベルの殺し屋よ。誰とも仲良くするつもりはない。今だって偽名で通っているくらいだし」
「忘れたわけではないのよ。現にあの人達が騙されてくれたおかげで好き勝手できてるし」
「ずいぶんないいぐさだな。この扉の向こうで聞き耳立ててるかも知れないのに」
「あら平気よ。この部屋は完全防音なの。聞かれる心配0だわ」
「へぇ…」
「それにしてもさすがというかなんていうか、警戒心が強いわね」
「…」
この性格は演技だ。
そんなことにも気付かないなんて…。
世界レベルの殺し屋が聞いて呆れる。