絶対王子は、ご機嫌ななめ

「政宗さん!!」

嬉しさのあまり声に出して名前を呼ぶと、あの切れ長の目が私をギロッと睨みつけた。

こ、怖い……。

あまりの迫力に怖気づいて円歌ちゃんの背中にサッと隠れたけれど、すぐに引っ張りだされてしまう。

「何隠れてるの。柚子、紹介するね。このふたりはこのゴルフ倶楽部のティーチングプロで」

「ティーチングプロ?」

「ああ、ごめん。わかりにくいよね。レッスンプロって言えばわかる? 要するに、早い話がゴルフの先生ってこと。こちらが稲垣智之さん」

「僕は自己紹介済み。ね、柚ちゃん。でも茶髪くんはないんじゃない?」

そう言って智之さんは私に近寄ると、ぷぅと頬を膨らませた。

この人のキャラ設定は、可愛いチャラ男くん?

確かに見た目は中性的ないまどきのイケメンだけど、このテンションにはなかなかついていけない。

「稲垣さん、すみませんでした」

「稲垣さんなんて、かたっ苦しいなぁ。智之って呼んで」

「でも……」

無理。彼氏でもないのに名前を呼ぶなんて。

円歌ちゃんをチラッと見て助けての合図を送ると、ため息をついた円歌ちゃんが智之さんに向き直る。

「智之さん。柚子をからかうのも、いい加減にしてください。柚子も、言いたいことがあったらハッキリ言う。いい?」

「「はい」」

茶髪くんと私、ふたり同時に返事をすると、智之さんの後ろに立っていた政宗さんが声を上げて笑い出した。


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