絶対王子は、ご機嫌ななめ

政宗さんの泡がついた手を、私が洗うってことね。はいはい、分かりましたよ。

……ってなんで!!

なんで私が、政宗さんの手を洗わなくちゃいけないの!? 自分じゃ何もできない赤ん坊じゃあるまいし、そんなこと自分でやればいいじゃない!

心の中でそう叫び、ひとり憤慨してるんだけど。心の中とは裏腹に、私の手は勝手に政宗さんの手を丁寧に洗い始めていた。

そうですか、そうですか。あんたはそんなにも、政宗さんのことが好きなのね。じゃあ、私はもう何も言わないよ……。

心の中の自分にそう話しかけ、そんな自分に苦笑する。

「はい、洗い終わりましたよ」

「ああ、サンキュー」

何が『サンキュー』よ、カッコつけて。でもそれが似合っていて、本当にカッコいいと思ってしまうから大問題。
どんなに好きになったって、政宗さんは振り向いてもらえない人。そう分かっているのに、思いは募るばかり。

どうしようもない気持ちに、ついため息が漏れてしまう。

と、そんな私を見てか、政宗さんは濡れた手のまま私の左腕を掴み、そのまま身体を引き寄せた。



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