絶対王子は、ご機嫌ななめ

まだ朝の六時台ということもあって車は順調に街なかを走りぬけ、高速道路のゲートをくぐり抜ける。

途中のサービスエリアで朝食をとると、そこからはノンストップでゴルフクラブへと向った。

「ここから山道になるから、もし酔ったりしたら言ってね」

智之さんの言葉に外を見ると、『天峰高原カントリークラブまで、あと5キロ』と書かれた看板が立っていた。

途端に鼓動が激しくなる。

もう少しで政宗さんに会える。そう思うと、胸の高鳴りを抑えることできない。

「急にソワソワしちゃって、柚子ちゃんっは本当に初で可愛いね」

「な、何言っちゃってるんですか、智之さん! そんな、ソワソワなんてしてません」

と反論してみたものの、私のことなんてお見通しと声高らかに笑われてしまう。

「いいんじゃないの、ソワソワしちゃっても。それだけ政宗さんに会いたいってことでしょ?」

「まあ、そうですけど……」

「でも今日は政宗さんにとって、予選通過できるかどうかの大切な日だから、すぐには会えないかも」

「え? そうなんですか?」

そんなこと全然考えてなかった。ゴルフ場に行けば、すぐに会えるとばかり思ってたのに……。

そんな大切な日に、告白なんてできるはずないじゃない。

つい今まで高鳴っていた胸は、一気に鳴りを潜めてしまう。



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