絶対王子は、ご機嫌ななめ

「綺麗なゴルフ場ね」

車から降りると、円歌ちゃんが大きく背伸びをしながら呟く。

「円歌ちゃん、運転疲れたでしょ?」

「まあ多少はね。でも運転は嫌いじゃないし、柚子の運転する車で来るよりはマシ」

「もう! 円歌ちゃんヒドい!」

一昨日は智之さんに車を出してもらったから、今日は私が出すと言ったのに。円歌ちゃんも智之さんも、「却下」と即答。

そりゃね、免許を取得して二年間、ペーパードライバーだったよ。でもこの春から働くようになって可愛い愛車で毎日通勤してるんだから、そこまで拒否しなくてもいいのに……。

ぷぅ~と頬をふくらませると、その頬を円歌ちゃんに突かれた。

「そういう可愛い顔は、私じゃなくて政宗さんに見せたらどう?」

不意に政宗さんの名前を出されただけで、顔が一気に熱くなってしまう。

「こ、こ、こんな顔、政宗さんに見せられない……」

両手で顔を隠すと、智之さんに笑われた。

「これだから、政宗さんも柚子ちゃんを手放せなくなっちゃったんだろうなぁ。柚子ちゃん、可愛すぎ」

「智之さんまで! からかうのはやめて下さい」

耳まで熱くなってしまい、それを冷ますように手で顔をあおる。

ホントに、もう。このふたりと一緒に来るんじゃなかった。

政宗さんを応援に来たの? それとも私の恋路を邪魔しに来たの?

私のことをネタに会話が弾んでいるふたりを見て、諦めにも似たため息が出る。



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