絶対王子は、ご機嫌ななめ

「もう、フルネームで呼ばないで下さい! っていうか、政宗さんが追いかけて、来なければ、すぐに、止まりますってば!」

走りながら大声を出すのは結構辛い。もともと運動神経の良くない私が全力疾走をしてるんだから、息は絶え絶え、太ももとふくらはぎはピクピク痙攣し始めた。

「意味も分からず逃げられて、追わない奴がいるか? どうして逃げたのか、ちゃんとした理由を聞くまで追いかけてやる」

政宗さんはそう言うと、ギアを入れ替えて加速する。

「う、そ……」

八歳の歳の差を物ともせず、政宗さんは猛ダッシュで近づいてきた。

さすがは元プロスポーツ選手だけあるなぁ……。

なんて、鬼に追いかけられているのに何感心してるの私!

このままでは追いつかれ捕まってしまうと思った私も、最後の力を振り絞ってスピードを上げたけれど。

普段の運動不足がたたり疲労がたまった足がもつれると、そのまま地面に向かって倒れ込みそうになって目を閉じた。



< 69 / 222 >

この作品をシェア

pagetop