絶対王子は、ご機嫌ななめ

外に出ると、爽やかな風が頬をゆるりと撫でていく。

季節は初夏、仕事を始めて二ヶ月が過ぎようとしていた。

仕事に慣れた頃に失敗をするなんてよく言うけど、この怪我はその言葉に当てはまるのだろうか?

ひとりそんなことをぼやっと考えていると、康成先生が私の肩に手を置いた。

「柚ちゃん。シャワーならいいけど、今日はお風呂はいらないでね。あ、政宗が一緒に入るなら風呂もOK」

「は、はい?」

康成先生ったら、私が政宗さんの彼女だとやっぱり勘違いしてる。仮に私が政宗さんの彼女だとしても、お風呂には一緒に入らない。まあそんなことは万に一もないから、心配する必要ないんだけど。

「康成、おまえいつから、そんなエロオヤジみたいなこと言うようになったんだ」

「男も三十越えて独身だと、誰もがエロオヤジになるんだよ。だから政宗もエロオヤジだな」

「おまえと俺を一緒にするな。おい柚子、行くぞ」

政宗さんは私の腕を掴むと、総革張りの車内に放り投げた。




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